「予定調和の旅」と「セレンディピティ」をAIはどう両立できるか
AIが完璧なスケジュールを作れば作るほど、旅行から「偶然の出会い」が失われてしまうのではないか? 効率化とワクワク感のジレンマに対するTabideaの思想とアプローチを語ります。
こんにちは、Tabidea(タビデア)開発者の Tomokichi です。
「AIで旅行計画を自動化する」というコンセプトを人に話すと、時々こんな意見をもらうことがあります。 AIが全部決めてしまったら、旅行の楽しみである偶然の出会いがなくなっちゃうんじゃない?
これは、旅行という体験の根幹に関わる、非常に鋭く、かつ本質的な問いです。 今回は、AIによる「効率化」と、旅の醍醐味である「セレンディピティ(偶然の幸運な発見)」を、Tabideaがどう両立させようとしているのか、その思想についてお話しします。
過剰な「予定調和」は旅をつまらなくする
確かに、分刻みの完璧なスケジュールは「安心」を生みますが、「ワクワク」は奪いがちです。
10:00にA神社に行き、11:30に予約済みのBレストランでランチを食べ、13:00にC美術館に行く……。 まるで仕事のタスクをこなすスタンプラリーのようになってしまったら、それは「旅行」ではなく「視察」です。
途中で見つけた良さげな路地裏のカフェに入ったり、地元のおじさんに勧められたマイナーな絶景スポットに急遽立ち寄ったりする。そんな「予定外の余白」にこそ、旅行の本当の楽しさが詰まっています。
Tabideaの役割は「余白(時間と心)」を作ること
では、Tabideaは「偶然」を奪う存在なのでしょうか? 私はむしろその逆で、AIが余白を作ってあげることで、偶然を楽しむ余裕が生まれると考えています。
旅行計画の段階で一番疲れるのは、「このホテルからこの観光地までどうやって行くの?」「定休日はいつ?」「移動に何時間かかるの?」といったロジスティクス(物理的な制約)の計算です。 ここに頭のキャパシティ(認知リソース)を奪われると、現地に着いた時にはもう疲れ果てていて、新しいものに目を向ける余裕がなくなってしまいます。
TabideaがAIの力で解決したいのは、このめんどくさいロジスティクスの部分だけです。
移動手段や、絶対に行きたいメインスポットの営業時間、大まかなルートといった「失敗すると致命的な部分(骨格)」はAIがサクッと整える。 そうすることで、じゃあ、この移動中の2時間は自由に行動しようという安心できる余白をユーザーに提供することが、Tabideaの最大の狙いです。
プロダクトに「あそび」を組み込む
この思想は、TabideaのUIやプロンプト設計にも反映されています。
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意図的な空白時間の確保 AIがプランを生成する際、スポットとスポットの間には、あえて長めの「バッファ(移動+アルファの時間)」を持たせるようにプロンプトで指示しています。分刻みのキツキツなプランは絶対に出力させません。
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周辺を探索するという提案 タイムラインの中に、特定のスポット名だけでなく「〇〇エリア周辺を散策」という抽象的なアクションを組み込む工夫もしています。「ここに行け」と指示するのではなく、「このエリアは歩くと楽しいですよ」という「提案」に留めるアプローチです。
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変更を前提としたUI 現地で予定が変わるのは当たり前です。過去の記事でも触れましたが、ドラッグ&ドロップで簡単にプランを組み替えられるUIは、「現地での気まぐれな予定変更」をストレスなくアプリに反映させるためのものです。
まとめ:AIは「優秀な添乗員」ではなく「気の利く友人」
私たちが目指しているのは、旗を持って先頭を歩き「はい、次はここですよ!」と指示してくる「優秀な添乗員」ではありません。
「ざっくりこういうルートで回るとスムーズだよ。でも、途中で面白そうな店があったらそっちに行っても全然OKだし、その時はまたルート計算し直すから安心して!」と言ってくれるような、**気の利く旅のパートナー(友人)**のような存在です。
予定調和の安心感と、セレンディピティのワクワク感。 この二つをどう技術とデザインで融合させていくか。これがTabideaの永遠のテーマであり、一番面白い挑戦でもあります。